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忘れ川をこえた子どもたち


ファンタジーの中でも、
その異世界そのものを描いたものよりも、人を描いたものが、
やっぱり好きです。

この、北欧のファンタジーも、とても印象深く
何度も読み返す物語の、ひとつです。



マリア・グリーペ 作 大久保貞子 訳
冨山房 1529円


誇り高き、貧しいガラス職人のアルベルトには、
妻と、2人の子どもークラースとクララがいた。

暮らしに余裕はなかったけれど、打ち込める仕事があり、
子どもがいて、なんとかごはんも食べられ、寝るところもあって、
アルベルトは、この生活にいちおうは満足していた。

けれど、妻のソフィアは・・・

ソフィアの胸には、ぽっかりとした穴があって、
そこには、小さな不満やかなしみ、もうすこし豊かになれれば・・
という想いが、いつもあった。

ある、市のたつ日、
思いがけずに、アルベルトのガラスが売れ、
お金を手にしたふたりは、月の光に導かれるように
夜の市で露天商からある指輪を買った。

こころの穴をみつめるような、
そのあやしく、美しい指輪が、悪いことのはじまりだった。

そして、それから一年もたった、同じ市の日に、
子どもたちが、ふたりの前から、いなくなってしまった・・・

・     ・     ・ 

幻想的な、異国の空気。

不思議な力をもつ指輪。

子どもたちのさらわれた、忘れ川のむこうの
町になれなかった町にある、大きな館。

こころに、それぞれの痛みや闇を抱える、館の住人たち。

予言者に、片目の大ガラス。

対決。

いかにもファンタジーらしいアイテムや状況がそろった、
さほど長くもないこの物語が、ゆるぎない普遍性をもち、
長い間、子どもだけでなく、おとなの読者をも満足させられているのは、
神話や伝承をモチーフにしながら、
作者が描くのが、生身の人間だから。

彼女の、人間の本質を見る目は、するどく、確かで、
でも、包容力があって、
暗く悪い人ばかりが登場するように感じても、
「昼の目」と「夜の目」を使ってみれば
性根が悪い人はいなくて、みんな自分の思いばかり
不器用に抱えて身動きのとれなくなってしまった人たちだと、わかります。

そして・・・

北欧の、凛と澄んだ空気のイメージとよく合った、
全体を通して、厳しく、美しい描写が、すばらしいです。

とっぷりと、そのなかに身を置いて、
想像できるぎりぎりいっぱいの、さみしさや心細さ、
その末に手にする、小さくても、きれいにかがやく喜びを、
たくさん、感じます。



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