ブログやるならJUGEM
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

<< ルリユールおじさん | main | にぐるまひいて >>
クラバート


ことり文庫の棚に並ぶ本の中で

秋の夜長に
眠れない夜に
眠りたくない夜に
どこか遠くへ行きたい夜に

読むべき本は、このファンタジー。

これほどまでに、
時を味あわせてくれる物語には
そう簡単には出会えません。

クラバートとともに過ごした
ずっしりとした3年間を
もう一度つかまえようと目を閉じれば、すうっと、夢の中。



プロイスラー 作 中村浩三 訳
偕成社 1680円


17世紀から18世紀にかけての
ドイツ東部、ラウジッツ地方。

ある、新年。
仲間と物乞いをして暮らしていた14歳の少年
クラバートは、不思議な夢に導かれ、
ひとり、ある水車場にたどりつく。

そこは、コーゼル湿地という、ものさみしい荒野にあり、
近くの農民は、決して近づくことのない、粉屋の水車場だった。

親方だと名乗る、片目の男と向かい合ったときから、
クラバートの運命は、動き始める。

粉屋は表向きで、じつは秘密めいた魔法学校でもある
その水車小屋で、ほかの12人の職人たちとともに、
親方に運命を握られたまま、終焉を待つのか、それとも・・・


プロイスラーが、11年の歳月を費やして織り上げた
重厚なファンタジーです。

終始、深い霧か夜の闇に包まれているような
しっとりとした重厚な空気をまとい、
その中を、手探りで信念をもって歩むように、物語は進みます。

自由、友情、愛と勇気。

そんな、絵空事のような言葉が、
目の前でたしかに繰り広げられる、壮大な物語を
魔法なんて・・・などと思わず、
おとなの人にも、読んでほしいです。

・     ・     ・

こんな物語を読み終えて
本をパタンととじるときの、あの感覚は至福。

たしかに目の前にあったはずの風景が、体験したはずの時間が
体にかんじる少しの疲労感や高揚感を残して、
この、手の中の、小さな1冊の本の中に、折り畳まれて仕舞われてしまう。

あ、と思って、またパラっとめくっても、
それは、もう、ただの文字の列でしかないのです。

もう一度、最初の1文を丁寧に追う気になる、そのときまで、
表紙の間でひっそりとひそむ物語が、ずらっと並ぶ本棚。

そんな本棚の前で、ぼんやりしているだけでも、秋の夜長はすぎていきます。

スポンサーサイト