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ちいさなろば


たくさんの色とりどりの絵本のなかで、
だからこそとても目をひく、あずき色の表紙。

ひらくと、水彩で描かれた冬景色が広がり・・・

ちいさなろばの
さみしさ、おどろき、よろこびが、しんしんと伝わり、つもり、
イメージのかけらや、たくさんの想いが
夢のように淡く、こころにのこります。



ルース・エインズワース 作
酒井信義 画 石井桃子 訳 福音館書店 840円


くさはらの中に、ちいさなかこいがあって、
ひとりぼっちの、ちいさな、くろい、ろばがいました。

かこいの中をかけまわって、
「イーヨウ!」とないても、「イーヨウ!」とこたえてくれる
ともだちは、いないのです。

ろばは、クリスマスのことも、サンタクロースのことも、
知りませんでした。

けれど、通りかかった女の子に、はじめて教えてもらったその夜、
偶然、ちいさなろばは、足をいためたトナカイのかわりに、
サンタクロースの手伝いをすることに、なったのです。

無事につとめを終え、
くたくたになって眠りについた彼に、
サンタクロースがくれたのものとは・・・


サンタクロースは、だれにでも、
ほんとうにぴったりのプレゼントをくれる。

ちいさなろばだって、
満足でこころをいっぱいにし、胸をはることができる。

そんなあたりまえのことを
あたりまえに信じている子どもたちにとって、
これほど、気持ちを満たしてくれる絵本は
ないのではないでしょうか。


静かで、おだやかで、美しくて、あたたかい、クリスマスのものがたり。


・     ・     ・


わたしが、子どものころに読んでもらった
クリスマスの絵本の中でも、とても印象深く、こころに残っていた1冊です。

すべての場面が、静かなのに、ドラマチック。

声にされるために生まれたような
石井桃子さんの訳のテキストは、
読んでくれた人の声と、その時間のあたたかさと一緒に、きざまれます。

書店員時代に、はじめてハードカバー化され、
美しい銀色の帯を巻かれたこの本を棚に並べたときの
ほこらしい気持ちも、忘れないな・・・

今も、たくさんの大好きなクリスマス絵本の中で、
そっと、特別におもっている、絵本です。


奇跡って、こういう風におきて、
こんな風に、語られるものなんだよ。



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