自分の身に起きる、
悲しい出来事を想像して、涙をながす・・・
時間をもてあました部屋で
午後の教室で
家族で移動する車の中で
子どもの頃から、思春期になるまで、
ひまさえあれば、そんなひとり遊びに耽りました。
そして、おとなになったある日。
この、物語の主人公のふくろうくんの
涙の使い方を知り、
目からウロコが落ちました。
こんな、妄想の使い方もあったんだ!
なんて、ロマンチックなんでしょう。
アーノルド・ローベル 作 三木卓 訳
文化出版局
ふくろうくんは、
「きょうは、なみだでおちゃをいれようっと」と思いたつと、
湯わかしをひざにかかえて、いすに座ります。
そうして、
ストーブのうしろに落ちて、見つけられっこないスプーンや
誰も見てくれる人のいない朝や
短くなって使えないえんぴつ
のことを想い、涙をながし、
その涙でお茶をいれ、夜のひとときを過ごすのです。
ああ、ふくろうくん。
「ながした涙でお茶をいれる」のではなくて
「お茶をいれるために、涙をながす」なんて、
なんて、おとなっぽい、想像力の使い方でしょう・・・
わたしも、まだ、涙のお茶を飲むことが、できるかな。
カップ一杯分の涙のために、
ちっちゃな出来事も留めることができるように、
こころの窓をきれいにみがいておこう。
そして、いつか、ふくろうくんのように、
「なみだのおちゃは、いつでもとてもいいもんだよ。」
って、しぶくつぶやくんだ・・・
・ ・ ・
5つの、小さなおはなしがはいっている本の中の、1話です。